3分でわかる児童書
サプライチェーンのソフトを入れると、あたかも自動的にうまくいくように錯覚しがちだが、実際には細部の見えない部分まで決めていかないと、うまく情報システムに載せることはできない。
図特に引当ルールの例を示している。
二月二日に在庫がこれだけあり、そのなかのいくつかはすでに受注引当済みで出荷日も決まっている。
引当済みで二月三日に在庫はほぼ引当されてしまっていて、次にオーダーを受けると欠品になるというときに、どれを優先させるかが問題になる。
既に引当済みの製品ではあるが、明日倉庫に入荷予定があり今日出荷しなくてもよいので、その分から出すのか。
引当済みの在庫には手を触れず、今日注文をいただいた顧客には、「あいにく欠品しておりまして、翌々日になります」と言、つのか。
それを、決めなくてはいけない。
あるいは在庫が残り少なくなったときに、大口の重要な顧客、たとえば消費財だと、JやDのような量販店から大量のオーダーが入ったときに、引当済みの在庫は、全部取り崩すのか。
取り崩すにしても、お客さまの優先順位があり、A社はだめだが、B社の発送は遅らせて出荷してもよいといった様々なケースを想定して、一つひとつ決定していくことになる。
CRMの場合と同様、顧客の重要度に応じてルールを決め、それを守ることが明確にされていないとロジックには組めないため、情報システムに落とせない。
情報システム上のロジックには、いわゆる「声の大きさ」がないため、人手を介入せずに自動的に回そうと思えば、ルールを明確に決定しておかなくてはならない。
それを破ってイレギュラーに処理し始めると、その後のロジックを崩すことになり、後処理にも影響が出る。
つまり、一度イレギュラーに対応すると、納期は回答できず突然欠品が出てしまう事態にもなりかねない。
生産部門は、もともとの生産計画に応じてモノをつくっている。
それがイレギュラー処理で狂い、欠品しそうになると、小売店や却の顧客にとっては、「欠品しそうだから、多めに頼んでおこう」ということになる。
注文が増えるとまた欠品を出すことになり、顧客のクレームのもとになる。
極端な場合だと、営業マンが自分の顧客に商品を納めるために、市中の小売店に自社製品を買いに行くことさえ起こる。
そんなことで営業時間を使うなど、信じられないということさえ発生することもある。
したがって、守るべきルールは、その運用を想定し、配慮した上で熟考しないと、うまく回らないことになる。
同様に、サプライヤー(供給者)との連携にも課題がある。
生産計画をそのままサプライヤーも見られるようになれば、それに基づいて材料手配などを効率的に行え、全体として最適化が図れるようになる。
すなわち、情報システム的な「ソリューション」が整うことになる。
また、製品の在庫が切れそうになると、自動発注・補充というように発注がかかり、補充されていく仕組みも、注目されている。
ここで前提となるのは、「正直ベースで、お互いがルールを守る」ことである。
たとえば、協力会社にモノを頼むと、発注してから納品されるまで二週間かかっているケースがあるとする。
しかし、協力業者が注文を受けてモノをつくる期間は、実際は二週間中三日間くらいである。
しかも、納期に近いあとの方でつくる傾向にある。
これは、発注を出す側が、急漣、発注量を増減したり土壇場でキャンセルしたりする可能性があるからだ。
注文を出したあとでも売り上げの動向に応じて発注量を増減させたり、キャンセルしたりすると、注文を受ける側でも、安全を見ないといけないため、猶予をもって生産計画を立てるようになる。
これが変わらなければ、ネットワークでつながったITシステムが整い、コミュニケーションがどれほどよくなったとしても、リードタイムや納期は短くならない。
さらに、こうしたルールは、継続して守っていかなければ、後戻りしてしまうのである。
したがって、ルールの部分とインフラの部分の二つを合わさないと、サプライチェーンは本当の意味での効果を発揮しないのである。
もうひとつ留意すべきことは、顧客の要望を聞くだけでは解答が出てこない点である。
顧客に聞けば、当然「納期が短い方がよい」、「配送は正確な方がよい」、「システムでつながって処理も簡単な方がよい」という答えが返ってくる。
顧客にとってよい方向というものは、決まっているので当然である。
なかにはイレギュラー対応をしてほしいという要望まで出る。
これらを全部そのまま鵜呑みにしていては、在庫を多くもち、随時配送の体制を整えてと、ルールに落とすところではイレギュラー処理ばかりになってしまう。
すなわち、オペレーションコストが高くっき、情報システムのコストも高くつくという結果に陥ってしまう。
したがって、誰かが顧客の要望をうまくまとめないといけない。
これは、全部のむという意味ではなく、「枝葉を切る」ということである。
要するに、顧客の要請に対して「これは諦めてもらいなさい」と言う人間が必要である。
「それでは、売り上げがなくなる」と営業部門が言ってきたとしても、「それをなくならないようにするのが、営業の腕だろう」と言い返す。
あるいは、「売り上げがなくならないようにするには、何を代わりにすればよいのか」、「よい情報を提供すればよいのか」、「約束を守ればよいのか」、それとも「取引条件を優遇すればよいのか」と、代替案を提案できる能力と権限をもち、ルール自体をシンプルにし、イレギュラーも少なくしていく。
そういった役割の人間が必要である。
単に新しい施策によるメリットを強調するのではなく、それを行ったときにどのくらいのリスクがあるのか、どのような手で対抗手段をとればそれを抑制できるのか、を検討するのも重要な役割である。
この役割を担うのが、ビジネスとITを併せて考えることができるブリッジ役のITコンサルタントなのである。
要するに、ビジネスサイドの事情をわかりながら、情報システムを生かすために最も効率的なところに物事を落としていく役割を担うのである。
サプライチェーン変革を定着させるために重要なのが、人材育成である。
特に重要なのが、マネジメントの意識改革だ。
各機能部門のトップのなかには、機能別組織で長く働いてきたマネジメントもいる。
少なくとも思考に関しては、自部門利益代表になっている場合が多い。
ちょうど若い人間が隣の部門のことを知らないように、上の人間も隣のことを知らない、あるいは考えない傾向にある。
仮にプロジェクトを組んで下の人間がお互いの連携をきちんと理解し、自発的に協調して動こうとしても、個々の活動に決裁や指示を与える上の人間のマインドが変わらないかぎり、サプライチェーンのオペレーションはうまく動かない。
プロジェクト期間中に、スタッフレベルの意識改革を進めるのと同時に、マネジメント層の意識も変えていかなくてはならない。
相五の連携に対する理解と、その上での意思決定のあり方に対する理解の促進を同時に進めるわけだ。
実際のプロジェクトのなかでは、いわゆるステアリング・コミツティと称して、部門代表を集めた意思決定のための会議体をつくる。
プロジェクト・チームが提案したものを部門長が審議して、「いい」「だめ」を判断する会議である。
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